Vol.2 話を聞こう
ある日、取引先の社長さんから電話があって「オリジナルの腕時計を作りたい」と言われた。
「有型ケースで、ですか?」と聞くと「一からオリジナルのケース使った時計を作りたい」と返事が返ってきた。
(<有型>とはすでに完成されているケースの事で文字盤だけ作成しオリジナルとして販売する。)
それまで時計は作った事はあるが正直、不安しかなかった。
その最大の不安が時計を作るにあたりそのロット数だ。
(ロットとは最低でもXXXX個作らないと工場が動きませんよ〜)というものでその金額は当然、かなりの額になる。
後日、依頼をくれた社長さんと会うべく千駄ヶ谷にある事務所に向かった。
中では洋服の展示会の最中で窓際、壁際には隙間なくデニムやシャツやジャケットが掛かっていた。
その中から社長さんを見付け声をかけた。
その後ろには謎の白人男性と謎の日本人のオジサン。
謎の白人男性はイギリス人でTENDERというブランドのデザイナーで、ウィリアムと名乗った。
そして、謎の日本人はそのTENDERを扱う日本代理店の社長さん。
なんでも、彼はイギリスでオリジナルの時計を作っていたが工場がなくなり時計作りが出来なくなって困っていた所、知り合いの社長さんが自分を紹介してくれたのだった。
そんな経緯とかなりマニアックな時計の話を一通りして簡単な文字盤のイラストと彼のイメージを忘れない内に今度は御徒町にある工場のオジサンの所に向かった。
道中、展示されていたデニムが気になって後にオーダーした。